隣家の木の枝が越境してきたら…? 民法改正により自分で切ることも可能に

庭やアプローチに木を植える家は少なくありませんが、中には、隣家の木の枝が境界線を越えて、自分の家の敷地に入ってきてしまった…というケースも。越境した枝によって葉や花が自分の庭に落ちたり、日照が遮られたりして、悩みの種になることもあります。
これまでの民法では、境界線を越えて入ってきた木の枝を勝手に切ることはできず、木の所有者に切ってもらうか、所有者の同意を得て切る必要がありましたが、2023年施行の改正民法によって、越境した枝を自分で切ることができるようになりました。
越境した木の枝のルールが変わる
改正民法では、木の枝が越境したときに「木の所有者に切ってもらう」ことを原則としつつ、次の3つのいずれかに該当する場合は、自分で切ることができるとしています(改正民法233条3項)。
- (1)木の所有者に枝を切るよう催告したにもかかわらず、相当の期間内(※)に切ってもらえないとき
- (2)木の所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないとき
- (3)急迫の事情があるとき
※「相当の期間」とは、枝を切るために必要な期間で、目安は2週間程度です。
また、枝を切るために隣家の敷地に立ち入ったり、切るときにかかった費用を木の所有者に請求することもできます(改正民法209条、民法703・709条)。
円満な解決に向けて
越境した木の枝に限らず、ご近所トラブルの解決策は「相手との話し合い」が基本となります。まずは、越境した木によってこちらが困っていることを伝えたうえで、「切ってもらえますか?」とお願いしましょう。トラブルがあったときに気軽に話し合えるよう、お隣さんとは日頃から有効な関係をつくっておくことがベストですが、もしもコミュニケーションがとりづらい場合は、町内会の役員を介して伝えてもらうことをおすすめします。
隣家が木を切ることに非協力的であったり、隣家が空き家で所有者が分からない、あるいは所有者の所在が不明で連絡がとれないために自分で枝を切ろうとする場合も、事前に弁護士や司法書士に相談しておくと安心です。自治体の法律相談など無料で相談できる窓口もあるので、問い合わせてみましょう。